17科 目 名社会倫理学学 科 名担当講師 他者を自己利益を推進するための手段としてみる風潮が世を覆いがちな今、「どんな利己的な人間にも備わる(A.スミス)」とされる他者の運命に対する関心=共感の存在は、他者を自己自身と同等な尊厳ある存在とみる大切さに気付かせてくれる。こうした見方は正義を対等な他者との関係の中で成立する徳性(アリストテレス)とみる古代以来の正義観にも読み取ることができる。翻って、今日グローバル化しつつある世界が直面する環境、情報網は、改めて利便さや利益の追求の背後に隠れがちな人間の本性の有り様を鋭く問いかけている。本講義では、こうしたテーマと向き合いつつ、社会的・政治的存在としての人間とは何かを究明する。〔授業概要〕 Ⅰ.共感と社会倫理(第1回~第4回) ⅰ.共感は人間の根源的欲求に根ざすもの;承認の欲望 ⅱ.共感を成立させるものは何か?;公平な観察者と適宜性 ⅲ.良心と社会道徳;想像的共感と慣行的共感 ⅳ.賢者の心と弱い心~経済的繁栄の論理と社会秩序~ Ⅱ.正義と社会倫理(第5回~第8回) ⅰ.古代の正義論と現代 プラトン、アリストテレスが敷いた現代正義論の土台とは? ⅱ.J.ロールズ;無知のヴェールと正義の2原理;「最大多数の最大幸福」がはらむ問題性は? ⅲ.サンデルが説く公共善を目指す正義;自由主義的正義観の限界と公共性の復権 ⅳ.センが説く現実焦点型対比視点;なぜ不正一般ではなくより大きい不正に立ち向かうべきか? Ⅲ.環境と社会(第9回~第11回) ⅰ.世界をめぐる水危機 水は人権か商品か、節約原理をめぐる規範と市場の相克 ⅱ.災害に備える倫理(1)防災訓練の目的は;命の保全か、命と財産の保全か? ⅲ.災害に備える倫理(2)災害時に問われる他者への義務;消極的義務と積極的義務 Ⅳ.情報化社会と倫理(第12回~第13回) ⅰ.ネット社会の規制と人間の自由 ⅱ.知的所有権と人間社会の変容 Ⅴ.全体のまとめ&試験(第14回~15回) ⅰ.各テーマ主要論点の振り返り ⅱ.試験〔授業の目的・ねらい〕〔教科書〕〔参考書〕〔成績評価の方法〕なし。原則として毎回配布するプリント教材にてそれに代える。1.アダム・スミス~『道徳感情論』と『国富論』~,堂目卓生,中公新書,20082.アダム・スミス 著『道徳感情論』 村井章子&北川和子 訳、日本評論社,3.『これからの正義について考えてみよう』 M.サンデル,早川書房4.モード・バーロー著、佐久間智子訳,『ウォーター・ビジネス』,作品社5.災害に向きあう,直江・越智(編)-高校倫理からの哲学,岩波書店6.CODE-インターネットの合法・違法・プライバシー,L.レッシグ,翔泳社最終週に実施する教場試験(ペーパーテスト)における評価を基本とする。テーマの節目ごとに課すレポートの出来を補助評価材料とする場合がある。区分・授業方法学年・学期理学・作業基礎 ・ 講義1年生 後期必 修 科 目単 位 数森川 孝𠮷
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